名古屋地方裁判所 昭和38年(レ)26号 判決 1963年6月22日
控訴人 永田春樹
被控訴人 東芝中部月販株式会社
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
控訴人は金二、〇〇〇円を国庫に納付せよ。
事実
控訴人は適法な呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭しないが、その陳述したものと看做された控訴状には「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求める旨の記載がある。被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
被控訴人代理人はその請求の原因として「被控訴人は電気器具等の月賦販売を業とするものであるが、昭和三六年一一月二一日控訴人に対して一四吋テレビ一台を代金五万五、〇〇〇円、その支払方法は右物件引渡と同時に一万三、〇〇〇円を支払い、残代金四万二、〇〇〇円を昭和三六年一二月以降昭和三八年二月迄毎月三日(但し昭和三七年一月は六日)に各二、八〇〇円を分割して支払うこと、但し右支払期日に一回でも遅延したときは残代金全額につき期限の利益を失うとの約で売却した。控訴人は右代金の内金三万九、二〇〇円を支払つたのみで、残代金一万五、八〇〇円を支払わないので、右残代金一万五、八〇〇円並びにこれに対する昭和三七年一二月一六日以降右支払い済みに至る迄商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払いを求める。」と述べた。
控訴人が陳述したものと看做された控訴状には「控訴人主張の事実中控訴人が被控訴人とその主張の如き売買契約をなしたことは認めるが、その余の事実を否認する。」旨の記載がある。
理由
被控訴人が電気器具の販売を業とするものであることは、控訴人の明らかに争わないところであり、控訴人と被控訴人との間で被控訴人主張の如き売買契約がなされたことは当事者間に争いがない。右争いのない事実によれば控訴人が被控訴人に対し右契約に基き五万五、〇〇〇円の代金債務を負つたことは明らかであり、控訴人は右債務の内金一万五、八〇〇円が未払いであるとの被控訴人の主張を単に否認するに止り、右債務の消滅或いはその履行を拒むベき事由につき何らの主張、立証もなさない。従つて控訴人は被控訴人に対して右残代金一万五、八〇〇円及びこれに対する割賦弁済期日を徒過したことにより全額につき期限の利益を失つた後である昭和三七年一二月一六日以降右支払いずみに至る迄年六分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。従つて、これを求める被控訴人の請求を認容した原判決は相当であり、控訴人の控訴は理由がない。
よつて本件控訴を棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九五条第八九条を適用し、なお、控訴人は原審及び当審を通じ適法な呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、単に控訴状を提出したのみで他に何らの訴訟活動をもなさず、右控訴状にも何らの主張事実も記載されていないこと記録上明らかであり、以上の点を考えると本件控訴は訴訟の完結を遅延させる目的のみをもつてなされたものと認められるので、民事訴訟法第三八四条の二を適用して控訴人に対し本件控訴状に貼用すべき印紙額の一〇倍以内である金二、〇〇〇円を国庫に納付すべきことを命ずることとして、主文のとおり判決する。
(裁判官 布谷憲治 外池泰治 白石寿美江)